近年、少しずつ聞かれるようになった「ヤングケアラー」
ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子どものことです。
最近では芸人の平成ノブシコブシの徳井さんやキンタローさん、俳優の山崎育三郎さんや松村雄基さんが、ご自身がヤングケアラーだったことを発信しています。
ノブコブの徳井さんがyoutubeでご自身の体験を語っているのも拝見しましたが「ヤングケアラーだった日々は、自分にとっては日常だったから特別なことだと当時は思わなかった」みたいなことを言っていて、自分が当事者だということさえ気づかない子供が今もたくさんいるのかもしれないな...と思いました。
この本はそんなヤングケアラーの実情を、著者の水谷 緑さんが2年以上取材し描きおろしたコミックエッセイです。
私だけ年を取っているみたいだ 感想
「BOOK」データベースより
“家族のかたち”を守るため、あの日わたしは自分を殺した。 親との関係に悩むすべての人へ。 ――失われた感情を取り戻す、ヤングケアラーの実録コミック。
個人の特定を防ぐために、複数人の体験を1つの物語にしているそうですが、1つ1つの出来事は実際のエピソードだそうです。
主人公のゆいは、統合失調症の母、家庭に無関心な父、特別扱いされる弟、 認知症の祖父と暮らしています。
ゆいは幼稚園のころから、買い物・料理・ そうじ・洗濯など家族の世話を一手に担っているヤングケアラー。
読んでいると胸が苦しくなるような場面が出てきます。
ヤングケアラーの介護対象者は、高齢者だったり身体的な障害や病気など様々だと思いますが、今回この本に出てくる「精神疾患を抱えた親の介護(介助)」も壮絶だなと思いました。
子供が介護しない場合でも、親が精神疾患という事実は、子供とって大変なことだと思います。
もちろん親だって望んで精神疾患を患っているわけではないし、本人だってとても辛いわけで。
しかも本書に出てくる統合失調症は、100人に1人の割合で発症すると言われているので、誰がいつ発症してもおかしくありません。
実際、私の中学の同級生の母親は(統合失調症かどうかは分からないけれど)精神疾患を患っていて、家は酷いゴミ屋敷でした。そして父親は、とにかく家族に無関心で次第に家に帰らなくなりました。
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この本の中では、学校の保健室の先生が「おかしい」と気づいて教頭に相談するのですが、厄介ごとが面倒なので「家庭の事に口を出すな」と言われてしまう描写があります。
酷いなぁとはもちろん思うけれど....虐待や宗教2世問題などと同じで、結局「家庭」の中で起こっていることに外部はどうやって介入したらいいんだろう?とも思います。
大人になって自分で収入を得ることが出来るようになれば、自分にとって不要な家族なんて捨ててしまえばいいと思います。
ただ....それまでは現実的に、子供自身が解決することは難しい。
子供がヤングケアラーになってしまうという事は、その家族の中に「まともな状態の大人」がいないということだと思うので、やっぱりとにかく外に助けを求めるということが大切なんだろうと思います。
この物語では、学校は助けてくれなかったけれど他に助けてくれる(サポートしてくれる)人が現れました。
だから当事者が声をあげる、そして周囲の「まともな状態の大人」たちが気づき、親子共に支援につなげていくことが大事なんだろうなと思います。
本書の主人公ゆいは、苦しみながらも自分の力で自分の人生を切り開いていきます。その姿は、今ヤングケアラーの子、かつてヤングケアラーだった人の希望かもしれないなと思いました。
もし自分自身が、周りの子が、近所の子が...ヤングケアラーかもしれないと思ったら、ぜひ外部に相談してみてください。
一人で抱え込む子供がいなくなりますように。